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子どもの「数」理解

子どもが言葉を発するようになると、「いっこ(1個)」などの数の言葉が出てくるようになりますが、子どもは数をどう理解しているのでしょうか?これが「数学」の第一歩なのかしら?心理学や保育、脳神経科学の専門書をひもときながら力ずくで!まとめてみました。
監修:愛知江南短期大学講師 冨貴田智子先生


そもそも数を理解するって?


数には、いろんな意味があります。
・数そのものである「数字」 例)1、2、9、7
・ある多さや量をあらわす「集合数」 例)1個、2個
・ものごとの順序の位置づけ、何番目、~より多い(少ない)を示す「序数」 例)1番目
・TVのチャンネルや電話番号などの「記号数」例)110番


 言われてみるとそうだけど、大人は当たり前に使い分けていますよね。でも子どもはお風呂で「いーち、にー、…じゅー!」まで言えても、「4ばんみる」ってリモコンのボタンを押せても、「みかんを4個持ってきて」と量としての数を言われると「?」となるようです。
 子どもの数の理解では「そこにあるものの数がわかること(集合数の把握)」すなわち「みかんが4個ある、その多さがわかる」が大事なのですが、この「ものを数えていくつあるかがわかる(計数)」は、下記の原理の理解・獲得が必要だと言われます(計数の5原理、ゲルマン)。


1)一対一対応:ひとつひとつ指さしして数える
  ○    ○    ○    ○
  いっこ  にこ  さんこ  よんこ  
2)安定した順序:数唱する
  「いーち、にー、さーん、しー、ごー、ろーく…」
3)順序無関連:どこから数えても量は一緒(5こは5こ)
          ○2こ 
       ○1こ       ○3こ  
           ○5こ   ○4こ
4)基数性:数えた最後に言った数がその量だと言える
    ○  ○  ○  ○  ○
   1こ 2こ 3こ 4こ 5こ   「5こ!」
5)抽象性:数えるものが何であろうと「3」は「3」 
 「みかんが3こ」「ミニカーが3台」「くまのぬいぐるみが3つ」…それぞれの物体を抜きにして「3」は3としてものの「あり方」を示す抽象的な概念として理解する
 みみみ   ○○○ 3
 ミミミ     ○○○ 3


 お風呂で「じゅう」まで数えるような数唱は2歳前後からできるようですが、具体的なものを「一対一対応」で数えていくつあるか量がわかるという「数の理解」は、平均的な子どもでは3歳でせいぜい「3」まで、5歳くらいで「10」前後といわれています。


 一方、1歳未満の赤ちゃんでも「3」までの量は感覚的に理解しているらしいことが実験によって明らかにされてきました。サビタイジング(subitizing)と言って、少ない数であれば一瞬に脳が視覚的に量を把握し判断しているというのです。1つと3つは量が違うと見てすぐわかる能力を、生まれながらに備えているというのです。ちなみに大人は5くらいまでの理解だそうです。
 ○と○○○は違う、と赤ちゃんも一瞬でわかる。
 ○○○○○と○○○の違い…、赤ちゃんには難しいです。大人はわかりますよね。
このもともと持っている数の感覚(number sense)に、日常の生活や遊び、大人の声かけなどの経験から獲得される新しい概念があわさって、数の認知の能力がだんだん培われていくのです。そのプロセスをひもといてみましょう。


「いっこ」は「1」個?


 言葉が出て、そして指さしができてくるころ、自然に「いっこ」という言葉も出てくるようです。ただし1という数を数えているのではなく、「そこに存在するもの」を指して「いっこ」というわけで、同じものがもう一つ出てきたとしても「2」ではなく、「いっこ」とか「もいっこ」、「おかわり」「おんなじ」「いっしょねー」とか言うようです。「いっこがいっぱい」、というような意味で言っているのでしょうね。


「いっこ、にこ、さんこ、いっぱい」


 1~2歳の子どもは、ぽっとん遊びを飽きずに繰り返すように、1個だけよりも同じものが数個集まっている方に関心を示します。また「おなじものをあつめる」「ならべる」遊びもするようになります。ミニカーを一列に並べたり、お散歩で小石やどんぐりを熱心に拾ったり。歩道のタイル、建物の床の模様が規則的に並んでいるところを歩くと、ぽんぽんと自分なりに順番をつけてそこをめがけて歩いたりするのも「同質のものの集合」という「あり方」を作ろうとする意欲のあらわれです。


 ただ子どもにとって、どんぐりはどんぐり。まずは、どんぐりの持っている色、形、大きさ、手触りといった感覚的な特徴の方に興味を持ちます。どんぐりをひとつずつ取ってはながめて、確かめて、それから並べます。自分で並べる作業を通じて「この」どんぐりが、「どんぐりのまとまり」「集合」となることを感じていきます。ここに何らかの大人の仕掛けも必要になってくるのですが…特別にすることはありません。何かが並んでいると大人も自然に「いっこ、にこ…」と数えたくなるようで、そういう大人の何気ない声かけから「並んだ状況=配列」と「いち、に、さん」という言葉と「3個」という量のあり方と抽象的な数の概念が、子どもの中で自然に結びつけられていきます。ここまでくるのには、だいたい3歳くらいになっています。
   
   ど   ど   ど          個々のどんぐり
 「いーち、 にー、 さーん」      指さしして数唱
   ○  ○  ○            もののあり方の理解
   1  2  3             数詞とあり方が一致
    「3個!」             集合数の把握


 ただし、「よーん、ご…」となると興味を失うことも。3歳頃の子どもは「3」までは感覚的なものがあるので、数とモノの対応がつきますが、「4」以上の理解には時間がかかります。3と4の壁は果てしなく高いのです。4の理解は3の理解がほぼ確実になってからさらに半年近くかかり、5とそれ以上を理解するのは、4の壁を乗り切って「数はひとつずつ違う」ことを理解し始めるころ、5歳過ぎから6歳くらいと言われています。


 小学校入学前に日常生活の中でおのずと身に付けるとみなされている数に対する感覚や概念を「インフォーマル算数」と呼びます。
・ 10前後までの数が数えられる
・ 10前後までの数量のどちらが多いか少ないかが判断できる
(数字でなくてもいい、○○○○○○○>○○○○)
・ 6前後の数の保存
  ○○○○○
○  ○  ○  ○  ○   長さは違うけれど、どちらも5つとわかる
・ 基礎的な分配(お皿にひとつずつ配る、2つずつ配る等)
・ 簡単なたし算・ひき算(集合に要素を加えれば多くなり、要素を取れば少なくなることを理解する)
などと言われます。


数の遊び


 子どもの学びはすべてそうですが、数についても同じで、生活や遊びの中で経験を積み重ねて理解していくものです。自分の手や身体をつかって、おもしろそうだなとやってみる、ためしてみるのが大事。それには子どもが興味を引く道具を使うことが大事です。子どもが片手で扱える程度の大きさと重みがあって転がらずに安定して扱いやすい・数えやすくて、過度に特徴がなくて「おなじもの」が手に入りやすいもの…特別な教材である必要はありません。みかんやお手玉、小石などの丸いものや、積み木やブロックなどの四角いものがいいです。平らなタイルやおはじき、細長いスプーンなどは、小さい子にはやりにくいでしょう。


 今の季節だったら、やはりみかんが手軽でしょう。ただし年齢やその子の個性によってできることに差がありますし、学ばせようとして接すると、子どもは即座に興味を失ってしまうかもしれません。どうやって数を理解しているのかな、って子どもの「今」を観察する感じで楽しく遊んでみてください。例えばこんな遊び方ができます。

1)子どもが箱からみかんを取って並べる。
2)子どもが並べたみかんと同じ数を、ママが並べる
3)いっしょに指さしながら数える(一対一対応)「いち、に、さん、し、ご!」「5個!」(計数)
4)ママが並べたみかんを少し、間隔を離して並べる。子どものみかんより、ママのみかんの列が長い状態に。
5)「どっちが多いかな?」と子どもに聞く(数の保存) 
6)ママが並べたみかんと子どもが並べたみかんを一緒にする。「いっぱいねー」
7)2つの山に分ける(7つと3つなど)。「どっちが多いかな?」(多少の判断)
8)もう一度、山にする。お皿を何枚か用意する。「みんなに分けてね」(分配)
9)「あれ、こっちのお皿の方が多いよ。いいなあ。」
「こっちのお皿からそっちに移そうか」(ひき算)「箱から少し取ってくる?」(たし算)
10)「ぜんぶで、いくつになったかなあ?」(10以上の計数)


 ここまで意識しないでも普段の遊びが、結果的に数の理解につながっていた、となるように上手に仕掛けてあげてください。ぬいぐるみの前にお皿を並べておままごとしたり(分配)、ミニカーを列にして「3番目のミニカーが駐車場にはいりま~す」「前に2台のミニカーが待ってま~す」などと序数と集合数を意識して区別して声かけしたり、パックに入ったいちごを家族に分けるお手伝い(均等配分)でもいいですし、お風呂での数唱を「5からはじめてみよう」とか「じゅー、きゅー、はち…」など大きい数から小さい数への順番にしてみてもいいです(実は、これはかなり難しい課題ですが…)。「ひとつ、ふたつ」と「いっこ、にこ」という言葉が意味としては一緒だっていうのも、普段の声掛けから自然に学んでいくでしょうから、あえて意識してどちらかに統一しなくてもいいのでは。


 また、子どもの歌やわらべうたには、かぞえ歌や手遊び歌がたくさんありますね。この手遊び歌も、5までの数唱と指の数量のイメージを楽しく結びつける良い手段になります。
  ♪ピクニック♪
  いっぽんと ごほんで たこやき食べて 
  にほんと  ごほんで 焼きそば食べて 
  さんぼんと ごほんで スパゲティたべて
  よんほんと ごほんで カレーライスたべて
  ごほんと  ごほんで おにぎりつくって 
  ピクニック!やー!


指をさまざまなモノに見立てること、見立てたモノがわかること、まねっこできること、手指を器用に動かすこと、歌やリズムにのれること、そういうさまざまな発達の要素を含んでいますし、その一つとして数の概念も入っているってことです。


何かしなくていいの?


 これまで見てきたように、数を理解するにはさまざまな情報処理が行われており、数の概念は視覚・聴覚・手指の器用さ・発声・抽象化の能力・意欲なども複雑に絡み合いながら発達していきます。子どもによって得手不得手はありますが、どの子も同じようなステップで発達していきます(もちろん、抽象化などに特に困難を感じる場合は特別な指導法も開発されています)。どこかの部分をいち早く訓練すると、数の能力が飛躍的に伸びる、すなわち将来算数が得意になる、なんてうまくはいきません。多くの専門家が口を揃えて言うのは、「いちばんよいのは、早期教育やフラッシュカードなどの特別なことは何もしないこと」。日頃の遊びの中で、自然と数概念は身についていきます。何気ない子どもの遊びにも、子どもが子どもなりに周りの世界を理解していこうと成長していく大事なプロセスが含まれているんです。


 だからこそ、子どもが今、興味を持つ遊びを大事にし、そこに少しだけ理解の手助けになるような働きかけを、周りの大人がしていきたいものです。たぶん、その働きかけの知恵は、昔から受け継がれてきた遊びや幼稚園・保育園での教育・生活・遊び方にたくさんヒントがあるんだと思います。
 知れば知るほど、おもしろい、子どもの世界!


2013年12月号 数 発達

冨貴田先生より
私が幼稚園で教えていたときは、年少(3歳児)では3まで、年中(4歳児)では5まで、年長(5歳児)では10までを中心に、また年長さんでは5までの加減(足す、引く)も扱っていました。例えば「イスを5こずつ重ねて片づけてね」「ここ、2つしか重ねてないけど、あといくつ持ってくると5になるかな。」など。基本的に、自分の年の数は確実に認識して欲しいと思っていました。
参考文献
R.ゲルマン著、小林芳郎・中島実訳、1989『数の発達心理学』田研出版  
スタニスラス・ドゥアンヌ著、長谷川真理子・小林哲生訳、2010『数覚とは何か』早川書房  
中沢和子、1981『幼児の数と量の教育』国土社
山口真希、2011「知的障害児の数概念発達に関する研究展望」奈良女子大人間文化研究科年報第26号
吉田甫、1991『子どもは数をどのように理解しているのか 数えることから分数まで』新曜社
吉田甫・多鹿秀継編、1995『認知心理学からみた数の理解』北大路書房 

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