PAKUっ子特集アーカイブ

絵本の世界と子どもの体験がつながるとき

 小さな子どもにとって絵本は読んでもらっておしまい、じゃありません。絵本の世界と自分の体験が結びついたとき、自分の世界がぱっと広がるものなんです。自宅で子ども文庫を開きながら5人の子どもを育てた石丸さんに、体験を交えて教えていただきました。

石丸良枝さん http://www.kodomiru.com/
10歳から19歳まで5人の子どもの母。自宅を開放したkodomiru文庫を2010年から始める。
kodomiru文庫:火曜14時半~17時半。塩釜神社そば、Pなし。予約不要。利用した月に100円。


はじめに


 自分の子どもはすっかり大きくなり家を出た子もいるのですが、kodomiru文庫には0才から中学生までの子どもたちが通っています。「しってる!」「いっしょ!!」とこれまでに一緒に発見したり楽しんだ絵本の世界を紹介しますね。


顔を知る


 新生児が笑うことを“虫笑い”とも言うのですが、子どもの表情がどんどん豊かになっていくことは、見ていてとても幸せになりますね。ガーゼでかくれんぼしたり、にらめっこでおもしろい顔をしてあげると喜びます。柳原良平の『かおかおどんなかお』(こぐま社)や、松谷みよ子の『いないいないばあ』(瀬川康男 え、童心社)を読むと、どの子も一生懸命その顔を真似しようとしていました。また“自分”を意識するようになってから鏡に出会うと、おもしろいように百面相をするようになります。『どんなかお?こんなかお!』(ニコラ・スミー作、評論社)には最後のページに鏡がついていて、思いがけず自分の顔が映るのでそれを見たお子さんの顔の変化に注目してみてください。




わたしとかぞくを知る


 まだまだ会話もおぼつかない頃、ヘレン・オクセンバリーのあかちゃんのえほん(文化出版局)のシリーズがお気に入りでした。文字がない本なので、読み手が好きに読めます。そのなかの『かぞく』は、お母さんが“わたし”を抱っこした絵から始まります。次にお父さん、お姉ちゃん、お兄ちゃん、おばあちゃん、おじいちゃん。最後に“わたし”とお友達の赤ちゃんの絵。長男は、当然自分しかいないので、姉や兄の場面では「これだれ?」と不思議そうな顔をしていました。長女は、兄がいるので、姉のところでだけ不思議な顔。家族が一緒にいる時は、どの子も嬉しそうに、絵とともに「おとーさん」「にいに」とその人を指さします。最後のページでは、力強く自分の顔に指を押し付けていました。この絵本は派手さがないので、見落としてしまうかもしれません。でもどのページの家族も、“わたし”を愛しそうに抱っこしている様子が安心感を与えてくれるので、何才になっても愛しく感じる本のひとつのようです。



気持ちよさを知る


 4年間で4人も産んだので、全員に「だっこ~」と言われて困り果てたことがありました。一人抱っこしたら、次々せがまれ、抱っこしてぇと泣かれ、泣きたいのはわたしよーとなったのは何度もあります。家にいる時なら座り込んで、両手、両足を使うのですが、外では限界があります。にしまきかよこの『だっこして』(こぐま社)を読んでいる時、年長の長女が「お母さんに抱っこしてもらうと気持ちいいんだよねぇ」と持ってきたぬいぐるみを抱っこします。2才の子も「だっこしゅるねぇー」と真似をしますが、ぬいぐるみが潰れそうです。子どもたちは、自分がしてもらった嬉しいことをすぐに真似したがるものです。親のわたしは、子どもにとって“抱っこの幸せ”がどれほどかを改めて気づかされたのでした。



おやすみの前に夜の世界を知る


 せなけいこの『ねないこだれだ』(福音館書店)は末娘が大好きな本でした。なぜか「いばば」と読んでいて、これを胸にお布団の上でちょこんと座って待っているのです。おばけと同じポーズで、おおいに楽しんで聞いていました。おやすみなさいの本は他にも読んでいましたが、寝る前に最低でも10回読まされたのはこの本だけ。怖がらずに聞けたのはお母さんの読み方のおかげと、文庫で末娘が話してました。絵本は怖くなくても、夜はちょっぴり怖いものというのは伝わっていたようです。



本物を知る


 長男は2才前から電車や飛行機、働く車が大好きでした。散歩に出かけて、工事現場が近くにあると、何時間でも見ていられました。ふとすると、クレーンやショベルカーのように手を動かすことがあります。何時間でも見た後に、カレンダーの裏紙に大きく絵を描いてました。それがまたしっかり描くのです。何も見ないで描くのに、描き終えるとのりものの絵本を持ってきて「いっしょ」といいます。絵本も実物も食い入るように観察してるんですね。「おかあさんもかいて」とよく言われましたが、こちらはつきあってるだけなので、何も見ないで描けるわけがありませんし、出来映えにはいつも「ちがう(ちばう)!!」と言われて怒られてました。息子は大学生になった今年の夏、クレーンなどの重機を運ぶ大型のトラックの助手席に座らせてもらったそうで、感極まる興奮度でどれだけ見晴らしがよかったかを語っていました。いくつになっても、好きなものは好きなんですね。


自然を知る


 子どもは挨拶を覚えるようになると、見たものすべてに挨拶をするようになります。お月様が夜空に出ると、「おつきさまでたね。こんばんは」そう話しかけたことありませんか?保育園からの帰り道、車から見ているお月様がいつまでも自分についてくるのに気付き、ある時「おつきさまは、本当にぼくがすきなんだね。ずっとついてくるよ」と言いました。この言葉は子ども5人、どの子からも出たセリフです。長男が9才の時にその疑問に答えてくれる科学絵本に出会いました。『ねぇ、おつきさま どうしてぼくについてくるの?』(きむらゆういち作、教育画劇)。読み終えて一言。「今までず~っと不思議だったんだよ!」、長男がすっきりした表情で言いました。



色を知る!


 子どもが通った保育園では、絵の具は青と赤と黄の3色しか使いませんでした。黄色と青色が混ざったら緑色。赤と黄色が混ざったら橙色。光の三原色と言われる3色で7色作ることができ、全部混ぜたら、あまり綺麗とは言えないまっ茶色になることを知りました。そして『あおくんときいろちゃん』(レオ・レオニ作、至光社)を読んだ時、「あっ!!知ってる!!」。自分たちが実際に体験したことが絵本に出ていて、しかも
“知っている”ことに得意気になっていました。



イヤイヤな気持ちを知る


 長女が2才から3才の頃、今からでは想像できないような立派なきかん坊でした。せなけいこの『いやだいやだ』や『ふうせんねこ』(福音館書店)は彼女のためにあるのではないかと思ったほど、なんでもイヤイヤと駄々をこねるところがそっくり。二冊ともお気に入りの本で、何度も読んでとせがまれました。そのくせ『いやだいやだ』の最後の文章「そうしたらルルちゃんはどうするの?」のルルを彼女の名前に変えて読むと、猛烈に怒っていました。いつものように長女の名前に変えて読んでいたら、ある時「わたしじゃないもん」と泣いてしまったことがあります。最初は自分のしているイヤイヤな行動を絵本で指摘されて泣いてるのかと思いましたが、どうやら違います。「これはルルちゃん。わたしとルルちゃんは一緒じゃない!」と言います。小さいながらも自分を持ちはじめたのですね。イヤイヤ期は、親は大変だけど、成長おめでとう!のはじまりだと気づきました。



親と子、それぞれの気持ちを知る


 おとなしかった息子が4才頃からいたずらっ子になり、私は毎日怒ってばかりいました。ユッタ・バウアーの『おこりんぼママ』(小学館)はわたしそっくりのママ。息子ペンギンは、ママに怒られたショックで全身バラバラになってしまうんです。息子ペンギンを世界の果てまで探しにいく、本当は優しいお母さんペンギン。息子は読み終えた時に、ボソッと「ボクのことも探してくれる?」と聞いてきました。私は「もちろん!」と答えて抱きしめると、息子は「このお母さんペンギンと同じだね」と言いました。

 思春期に入ると、子どもの口数は減っていきます。自分のことを直接語って欲しくないオーラが出てきます。でも、ふとしたことで昔、読んでもらった絵本のことを話しだすことがあります。絵本だけではありません。自分で読めるようになってから手に取った児童書やヤングアダルト向け文学も思い出すようです。子どもの読む本は親も読んでおくといいでしょう。そして親が読んでいる本を、台所のテーブルにでもあからさまに置いておくのです。わが家はそのおかげで、「その本、好きだったな。こっちの本はおもしろいの?」と子どもの方から声がかかりました。私は本の主人公の行動を通して、さりげなく親の気持ちを伝えることができました。



絵本の世界を親子で楽しむ


 子どもたちは「おんなじ!」「しってる!」「よんだ!」そんな感動を、日常にみつける天才です。みつけた感動を大好きなお母さんに話すことも楽しみにしています。そこに親の忙しさへの配慮なんてものはありません。つい親は忙しくて、「あとでね」とか「ちょっと待って」となりがちな時も…。そのうち子どもに知恵がつき、この「あとで」がちっとも来ないことに気づくと、ストライキを起こし、親の言うことを聞かなくなります。どれだけ忙しい一日の中でも、「絶対に話せる時間」という約束ができていれば、子どもはちゃ~んと待ってくれるようになるんですよ。話せる時間はおやすみ前の絵本タイムのときでもOK!その日の出来事を一緒に感動してあげてください。そして、子どもが疑問に思ったことや、おなじ体験が書かれた絵本を見つけたら、その本を読んであげてください。絵本で見たことが現実になり、現実で見たことが絵本になっている。その繰り返しがあればあるほど、子どもたちの世界がどんどん広がっていきます。この広がりを一緒に体験できることこそ、絵本を親子で楽しむ醍醐味!と言えますね。


石丸さんが講師の親子で参加できる絵本の講座

11/5(月)10:30~11:30 にじいろ(平針南) Tel 807-2720
「絵本のある暮らし 季節の絵本編:クリスマス」 予約不要、無料 

11/27(火)10:30~11:30 瑞穂児童館 Tel 852-2229 
「絵本のある暮らし」 未就園児親子20組(要申込)、無料
 11/13(火)10:30から受付開始

12/14(金) 徳重図書館 Tel 878-2234
「子どもと本の講座」 各10組(要申込)、無料、11/22(木)から受付開始
 (1)5カ月~1才対象 10:15~10:55 (2)2才~3才対象 11:15~12:00
 12/7(金)の同時間帯に開催のわらべうた講座との両日参加が必要。

2018年10月号 絵本 kodomiru 文庫


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